整形外科・神経科

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正常に動くには

正常に運動するには、神経、筋肉、腱、骨、靭帯、関節などが正しく機能しなければなりません。これらの何処かに異常があると、正常に動くこと(歩く・走る・跳ぶなど)はできません。原因は脱臼、骨折、靭帯断裂、形成異常、腫瘍、椎間板ヘルニア、免疫異常、感染症など、整形外科から神経科疾患まで様々です。放置すると治療が難しくなったり、命に関わる病気もあります。いつもと歩き方が違った場合は早めにご相談ください。

その症状は痛み?

  • 寝起きや運動開始時がぎこちない
  • あまり遊びたがらなくなった
  • 寝ていることが多くなった
  • 歩くスピードが遅くなってきた
  • 手足を触られるのを嫌がる
  • 歩き方がおかしい
  • 足を引きずっている
  • ケンケンすることがある
  • 突然「キャン」と鳴く
  • 高い所に登らなくなった(猫)

跛行診断とポイント!

跛行の原因は様々です。外傷による捻挫と診断を受けたが改善しない場合、実際には靭帯断裂、脱臼・亜脱臼、骨折、神経の損傷などを起こしている場合があります。改善に乏しい場合は、詳しい整形外科学的検査とレントゲン検査を行う必要があります。跛行の原因によっては、血液検査、関節液検査、エコー検査、CT・MRI検査、関節鏡検査などが必要な場合もあります。跛行の様子を説明するのはなかなか難しいと思いますが、当院では広い院内スペースを利用して、歩行・歩様の確認が可能です。犬猫の性格によっては跛行の視診が難しいことがあります。自宅や散歩中の症状を出ている動画を撮影し、ご持参頂くと、診察が非常にスムーズかつ診断の助けになります(スマートフォン撮影でOK、スロー再生できるとベストです)。

整形外科・神経科疾患

椎間板ヘルニア

特にミニチュア・ダックスフンドが圧倒的に多いですが、椎間板ヘルニアは全ての犬猫に起こります。ヘルニアは胸腰部に多いですが、頚部にも起こります。脊髄障害の程度により、痛みのみから、運動失調や麻痺、排尿・排便困難まで起こります。最重症例の中には命を落とすケースもあります。運動機能不全を伴わない痛みのみの場合は、内科治療(保存療法)を第一にお勧めします。しかし、基本的に椎間板ヘルニアの治療の第一選択は外科手術です。重症度が高くなるにつれ、内科治療による回復率は下がります。適切な重症度診断を行い、治療の時期を見極めないと、外科手術の回復率が低下してしまうので注意が必要です。

骨折

骨折は落下や交通事故、咬傷などの大きな外力が加わることによって起こります。トイ犬種などでは、ソファーや飼い主さんの膝の上から飛び降りた、ボールを追いかけてフローリングで転んだなどでも骨折が起こるため、生活環境には注意が必要です。一言で骨折と言っても、骨折の部位、骨の状態(単純骨折、粉砕骨折)、開放骨折の有無により治療法や難易度は様々です。骨折の治療法としては、ギプス固定(キャスティング法)、ピンディング法、プレート法、創外固定法などがあります。人と違い、犬猫は運動制限や管理が困難なため、プレート法を行うことが一般的です。

前十字靭帯断裂

犬猫の後肢跛行の原因に重要な疾患として、前十字靭帯断裂があります。急性・慢性の跛行の原因として、しっかりと診断しなければなりません。靭帯の損傷の程度により、部分断裂と完全断裂、さらに半月板の損傷を伴う場合と伴わない場合があります。放置すると変形性関節症が急速に進行します。前十字靭帯断裂の治療は手術が必要です。手術方法は関節外制動術や脛骨高平部水平骨切り術(TPLO)などがあります。膝蓋骨脱臼症や捻挫と診断を受けたが、跛行の改善が乏しい場合は注意が必要です。

膝蓋骨脱臼症

膝蓋骨脱臼症は犬にとても多くみられる整形外科疾患です。小型犬では内方、大型犬では外方への膝蓋骨(膝のお皿)の脱臼が多く認められます。症状としてはスキップやケンケンをしたり、後肢を後ろに蹴る仕草をしたり、痛がるなどです。原因の多くは遺伝的な素因によるとされていますが、外傷なども原因となります。特に大型犬の膝蓋骨外方脱臼症、小型犬の成長期グレード4(4段階)、頻繁な痛みと跛行症状を伴う場合は、早期の診断と外科的治療が必要です。全ての犬で必ず手術が必要とはかぎりませんが、膝蓋骨脱臼症は変形性膝関節症や前十字靭帯断裂のリスク因子となりますので、適切な治療・管理が重要です。膝蓋骨脱臼症は猫でも認められる病気で、犬と同様に治療には外科手術が必要です。

股関節脱臼症

股関節の脱臼は落下や事故などの強い外力がかかった場合に起こります。股関節形成不全や筋力の低下により、股関節に緩みが生じている場合は、弱い外力でも股関節脱臼が起こる場合があります。脱臼は様々な方向に起こります。股関節形成不全や脱臼症に伴う骨折などがない場合は、非観血的な脱臼の整復を行います。しかし骨折を伴ったり、股関節形成不全がある場合や、脱臼整復後も容易に再脱臼してしまう場合は、外科手術が必要です。

変形性関節症

シニア期の犬猫の多くが罹患しています。立ち上がるのが辛そう、歩き方がおかしい、遊んだり運動することを好まなくなったなどは、変形性関節症のサインかもしれません。変形性関節症は関節表面の軟骨が変性・磨耗して、軟骨下骨や滑膜(関節の膜)に炎症が起こり、痛みを生じます。進行すると骨棘ができて関節の変形が起こり、関節の動きがさらに悪化し、悪循環を生みます。しっかりと整形外科学的検査とレントゲン検査にて早期に診断し、ペインコントロール、運動や食事の管理、生活環境の改善が重要です。

レッグ・カルベ・ペルテス病

レッグ・カルベ・ペルテス病は大腿骨頭無菌性壊死症とも呼ばれ、6~10ヶ月齢の小型犬に好発する病気です。通常、片側性の病気ですが、15~20%の症例が両側性に罹患します。詳しい病因は解明されていませんが、大腿骨頭に分布する栄養血管が、何らかの原因で絶たれてしまい、骨頭が壊死し、骨の変形や骨折が起こります。とても激しい痛みを伴い、比較的重度な跛行を認めることが多いですが、軽症な場合は気付かれずに過ごし、早期の変形性関節症の原因となります。治療法は人工股関節全置換術、大腿骨頭回転骨切り術、大腿骨頭骨頚部切除関節術などの外科手術です。

症例紹介

橈尺骨骨折 ジャイアント・シュナウザー 6歳 メス 48kg  

– 術前の状態 –

– 術後の状態 –

交通事故により橈尺骨が粉砕骨折(前肢)してしまいました。
橈骨と尺骨にそれぞれプレートとスクリューを用いて整復手術を実施しました。
プレートとスクリーは、体に一生入っていて問題はありませんが、本症例は、術後の骨の癒合も良好であり、プレートが関節に近いため、橈骨のスクリューを間引きし(抜釘)し、最終的には橈骨のプレートは抜去します。

レッグ・カルベ・ペルテス トイ・プードル 9ヶ月齢 メス 2.9kg

– 治療前 –

– 治療前 –

– 治療後 –

右の大腿骨頭が罹患し、病的剥離骨折を起こし、股関節が亜脱臼しています。 重度の痛みにより、右後肢は地面に着くことさえできません。
本症例では、大腿骨頭骨頚部切除関節術を実施しました。
手術後、痛みから解放され、術後早期から非常に活発に足を使いはじめ、元気を取り戻しました。
今後も関節の可動域や機能、筋肉量を回復するために、まだまだしっかりとしたリハビリテーションが重要です。
その他の治療選択肢として、人工股関節全置換術などがあります。

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