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猫 膿胸 胸腔チューブ設置術
エキゾチックロングヘアー 5歳齢 去勢オス 3.5kg
1週間前からの食欲低下、呼吸促迫を主訴に来院
一般身体検査では顕著な発熱、努力呼吸を認めた
精査を実施したところ、レントゲン検査にて重度の胸水貯留を認めた(画像1)
胸腔穿刺にて臭気の強い血膿性胸水とガスを採取し、膿胸と診断した
回収した血膿性胸水を鏡検したところ、重度の細菌感染を認めたため、胸水の細菌培養・薬剤感受性検査を実施した
同時に胸腔洗浄処置と抗菌薬による入院治療を開始した
胸水抜去後は呼吸状態が改善した(画像2)
しかし翌日以降も胸水の再貯留が認められ、同様の処置を数回したものの再燃を繰り返したため、
胸腔チューブによる持続的胸腔ドレナージ(排液)が必要と判断し、胸腔チューブ設置術を行なった(画像3)
症例猫が大人しく協力的であった為、鎮静剤と局所麻酔のみで施術できた
1週間かけて徐々に排液が減少し、入院7日目に退院
退院2日後(胸腔チューブ設置9日目)に胸腔チューブを抜去した(画像4)
細菌培養検査ではPasteurella spp.とBacteroides spp.の2菌種が分離された
薬剤感受性試験で感受性のある抗菌薬を6週間継続し、治療終了とした
3ヶ月目の定期検診、レントゲン検査は異常なし(画像5)
目立った後遺症はなく元気一杯走り回る様になりました
定期検診で状態が安定していたので、膿胸の再発予防としても重要な重度歯周病の治療を行った
歯科治療後はますます食欲が改善し、体重も4.1kgまで増え、さらに以前よりも活動性が改善してくれました
膿胸は胸膜腔内に膿が貯留する病気です
原因は咬傷などの外傷や、異物、寄生虫などと報告があるが、原因の特定が困難な場合も多く、
何らかの原因で、血行性に胸腔内に細菌感染が起こり、膿が溜まることで発症します
治療が奏功した場合、一般的に予後は良好です
しかし、呼吸不全や敗血症、多臓器障害などを合併し、生命に関わる重篤な病気です
適切な抗菌薬の投与には、好気性・嫌気性の細菌培養検査と薬剤感受性試験が必要です
さらに抗菌薬の投与のみでは治療は奏功しないため、
膿胸の治療には胸腔穿刺や胸腔チューブによる持続的ドレナージが必須です
抗菌薬と胸腔穿刺のみで改善か乏しい場合、ズルズルと治療を継続してしまうと、肺の癒着や膿瘍形成などが起こり、治療が厄介になることもあるため、早期に積極的かつ適切な治療を行うことが重要です
胸腔チューブによる持続的ドレナージでも改善が乏しい場合は、CT検査や開胸手術が必要なケースもあります
今回の症例は、重度歯周病があり、血膿性胸水からも口腔内の常在菌が分離されています
この様な結果から、歯周病の早期治療、歯科の予防医療の重要性を啓蒙したいケースでした