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犬 帝王切開 妊娠 難産
雑種犬 1歳齢 メス 3.4kg
2ヶ月前に発情出血があり、未去勢オス犬と同居しているため、妊娠の可能性があるとの主訴でご来院されました
母犬の身体検査において、腹部聴診にて胎児の心拍が確認でき、
エコー検査で元気に拍動する胎児の心拍、レントゲン検査で骨が形成がはじまった2頭の胎児が確認できました(画像1・2)
発情出血の時期とレントゲンにおける胎児の骨の形成具合から、分娩時期は10〜14日後と診断しました
診察から14日後、
分娩前兆候を認め、母犬が分娩にはいったが、分娩が進まないと緊急連絡があり、ご来院されました
レントゲン検査では十分に胎児の骨格は形成おり(画像3・4)、
膣検査でも子宮口が十分に開き、胎児の頭部が触知できました(開口期)
しかし、
エコー検査で1頭の胎児の心拍が150回/分 以下(正常な胎児の心拍は200回/分以上)になっており、胎児へのストレスと一般状態の低下を認め、子宮無力症を疑い、
緊急帝王切開の適応と判断しました
摘出した胎児は、すぐに元気な産声をあげてくれました
2頭とも女の子でした
帝王切開後のお母さん犬は産後出血が多かった為、ホルモン治療と点滴入院になりました
手術6時間後には、産後出血も改善傾向にあり、しっかりと食事を食べてくれました
一足お先に帰宅した子犬達は、元気いっぱいにしっかりとミルク飲み、
翌日に退院したお母さん犬も、立派に子育てを頑張っています
帝王切開
一般的に犬の平均妊娠期間は65日 ± 2日と言われています
しかし、交配=受胎ではないので、56〜68日ほどのばらつきがあります
その理由は、
排卵された卵子は未熟で、2〜3日経ち成熟卵子となり受精可能になること、
子宮内に入った精子の生存期間は6日程と長いことです
多くの犬は安産に自然分娩します
難産の発生率は一般的に5%ほどです
原因は犬種、過大胎児、胎児失位、骨盤腔の異常などで、一番は子宮無力症が原因とされます
スムーズに分娩がされない場合、帝胎児の生存率が下がるため、帝王切開が必要になります
異常な分娩としては、
破水してから1〜2時間以内に胎児が娩出されない
強い陣痛が30分以上続いているのに娩出されない
微弱陣痛が4時間以上続いているのに娩出されない
などがあります
分娩前兆候(体温の動き、巣作り行動、排尿・排便、食欲など)や分娩時間などは、飼い主から聴取するしかありません
飼い主が繁殖に慣れていないと、問診から得られる情報が非常に少なく、
帝王切開のための来院の指示等の判断は非常に難しいです
最終的な帝王切開の判断には、各種検査(画像検査・血液検査など)が必要になります
妊娠可能性がある場合、まずは交配後1ヶ月目に妊娠診断にご来院ください
妊娠を確認したら、妊娠45日目頃に胎児の骨の形成が進むため、胎児数、胎位異常の有無、骨盤と胎児の大きさの比較などをレントゲンで確認します
その後は人と同じ様に、母体と胎児の状態により、分娩予定日まで適時再診します。
帝王切開の多くは緊急手術です
手術準備や多くのスタッフが必要になります
緊急帝王切開も可能な限り対応いたしますが、
当院で妊娠の診断及び経過を追えていないケース、夜間の緊急帝王切開のケース(スタッフ確保が困難な為)、診療・手術中のケースなど、状況により緊急対応できかねる場合もあります