症例紹介

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整形外科膝蓋骨脱臼症

犬 膝蓋骨内方脱臼症

トイ・プードル 8ヶ月齢 3.5kg

1ヶ月前より左後肢の間欠的な跛行を認めた

整形外科学的検査とレントゲン検査で膝蓋骨内方脱臼症 グレードⅢ(左右)と診断した

本症例はまずは症状の強い左後肢の手術を実施しました

画像1・2:術前レントゲン、画像3・4:術後レントゲン

 

手術所見

膝蓋骨の裏(滑車溝面)に骨のびらんを認めた

この骨びらんは痛み起こし、今回の症状の原因と考えられた

骨びらん:膝蓋骨が脱臼を繰り返した結果、膝蓋骨の軟骨が削れた状態(緑丸)

 

滑車ブロック造溝術

浅い滑車溝(滑車溝形成不全)に膝蓋骨が十分に収まるように溝を深く形成した

 

脛骨粗面転位術


脛骨稜を骨切りし、大腿四頭筋郡−膝蓋骨−膝蓋靭帯−靭帯付着部(脛骨粗面)のアライメントを調整後(緑矢印)、骨切り部をK-wireで固定した

術後は良好な機能回復を認め、徐々に患肢を使用し、正常な歩行になりました

 

膝蓋骨脱臼症は膝蓋骨(膝のお皿)が滑車溝(膝の溝)から外れてしまう病気です

無症状からスキップ様の歩行、後肢を後方に蹴ったり、伸ばしたりする癖、足を全く使わないなど、症状は様々です

膝蓋骨脱臼症は外傷により発生する場合もありますが、多くは骨と筋肉の発育のアンバランスに伴って発生します

多くは両側性の病気ですが、左右差があることも多いです

多く犬猫で脱臼方向は内方ですが、外方や内外方への脱臼も認めます

小型犬に多い病気ですが、中型犬や大型犬、猫にも認められます

大型犬や猫は比較的低いグレードでも症状が強く出ることが多いです

 

膝蓋骨脱臼症のグレード(Grade)分類

Grade Ⅰ

正常に滑車溝の中に膝蓋骨は収まっているが、膝蓋骨を手でを押すと滑車溝から脱臼し、手を離すと自然に元の位置に戻る

多くが無症状であるが、時折症状を認める

Grade Ⅱ

通常は膝蓋骨は滑車溝に収まっているが、足先が回転したとき、手で押した時などに簡単に膝蓋骨が滑車溝から脱臼する

足先が元にもどる、手を離すことで膝蓋骨は滑車溝内に自然にもどることができる

無症状から重度の跛行を認めるまで、症状の程度は様々である

Grade Ⅲ

膝蓋骨は常に滑車溝から外れているが、手で押せば膝蓋骨を滑車溝内にもどすことができる

しかし、手を離すとすぐに膝蓋骨は滑車溝から脱臼する

無症状から重度の跛行を認めるまで、症状の程度は様々である

Grade Ⅳ

膝蓋骨は常に滑車溝から外れており、手で押しても膝蓋骨を滑車溝内に収めることができない

多くは重度の跛行を認め、足を完全に挙上してしまうケースもいる

さらに重度の骨変形を合併している症例もおり、骨切り矯正手術が必要なケースもある

 

症状の程度とグレードは比較的相関がありますが、症状とグレードの重症度が相関しないことも多い病気です

 

膝蓋骨脱臼症の根本的な治療は外科手術による整復手術ですが、無症状なケースでは、保存療法で経過観察することもあります

年齢や症状、骨格状態などから、手術方法や適期を判断します

当院では何らか膝蓋骨脱臼症の症状のある症例手術をお勧めしております

 

膝蓋骨内方脱臼症の基本的な手術方法は以下の4つがあり、

術前に計画し、術中に判断しています

1.縫工筋・内側広筋リリース術

2.滑車ブロック造溝術

3.外側支帯縫縮術

4.脛骨粗面転位術

膝蓋骨脱臼症は上記の基本的な手術を行っても、多くはないですが、術後に再脱臼し、再手術が必要になるケースもある疾患です

当院は手術前にしっかりとインフォームドを行います

ご心配な様子がありましたら、是非お気軽にご相談下さい

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